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一時間につき、5千円。
これが、志乃のレンタル料だ。
ランチをして、少し歩いたりする。
そんなデートプランを思い描き、章は彼を3時間レンタルすることにした。
食事やその他に発生する諸経費は、全て章が支払う契約だ。
もちろん志乃の分も、だ。
彼は章の家の近郊に住んでいるらしく、出張費は軽かった。
すでに前払いで、志乃の所属する事務所口座に、入金は済ませている。
「志乃くんが同意すれば、延長も可能らしいけど」
きっと、そんな度胸は無いよな。
「二人で何を話せばいいのかすら、解らないんだから」
ランチの間、ずっと無言だったら気まずいよな……。
やっぱり、こんな事やめれば良かったかな。
章の心情が大きくマイナスに傾き、その手に汗まで吹き始めた時、気分が急に明るくなった。
待ち合わせの公園中央に立つ、現代アート風の時計塔。
その足元のベンチに、ちょこんと座った少年が、目に飛び込んできたのだ。
章は足早に少年に近づくと、声を掛けた。
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