第7話.望まぬ再会

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第7話.望まぬ再会

 成世が医務室を出て行った後。  施設の廊下で、彼は思わぬ人物と遭遇した。 「……2番様」 「おわ、桜さん?」  背後から声をかけられ、振り向いた先にいたのは、桜色の髪を持つ、白衣を着た無表情の長身の男。  2番様、と感情のともらない声で成世を呼んだその男は、成世と目が合うと、虚ろな目をしたまま、おもむろに口を開いて言った。 「……1番様より通達が。至急、二階の会議室へ来るようにと」 「真堂さんが?……え、でも俺、さっきあの人から仕事命じられたばっかなんだけど…」 「その件に関しては、既に他の方に代理を命じられたそうです。とにかく、急いで来てほしいと」  成世の問いにも、男は機械的な返答しか返さない。  この長身の男……桜は、組織の中でも雑務を担当している人物だった。  性別は、αばかりの組織では珍しいβ性。  こんな実体もわからないような組織で雑務だなんて、とは思うものの、彼は今回のように指示を伝達したり、出資者でも運営人でもないことを利用して、両者の均衡と秩序を保つ重要な役割を担っていたりもする。  とある事情で、というのはかなりの難点だと感じるが、それでも成世たち運営人が仕事を滞りなく行えるのは、彼のおかげだということは確かだった。  急な要求に成世は内心小首をかしげたものの、真堂の命令に背くわけにもいかず、わかったよ、と小さく頷く。  成世が真堂の指示を誤解なく了承したと見受けると、桜は会釈をし、回廊の奥へと消えて行った。  一方成世も踵を返し、真堂の待つ二階の会議室へ向かって歩き始める。  ……だが、成世はこの時、もっと警戒しておくべきだったのかもしれない。  たった今自分に伝言を伝えた彼が、自身の身近にいる人物の中で唯一、出資者と接触が図れる人物であったということに。
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