76人が本棚に入れています
本棚に追加
第1話.とあるαの夢
─昔から、何もかも退屈でたまらなかった。
次期当主の座を巡って、対立を繰り返す兄と妹も。
始めからありもしない当主の寵愛を得るため、後継者となるよう強要してくる母親も。
自身の金と名誉のために、擦り寄ってくる周囲の人間も。
何をしてもつまらなくて、馬鹿馬鹿しくて。
全部壊れてしまえばいい、と。
そう思ってしまうほど、自分の人生にうんざりしていた。
……だけど、そんな矢先。
兄に、このゲームに売られた。
……大して驚きはしなかった。
財閥家がゲームの主催に加担していることは、前々から知っていたから。
兄がその権利を得るために、父親である当主を事故と見せかけて殺害したことも。
それでもその兄が自らを脅かす妹ではなく、僕を売ったのは何故か。
理由は簡単だ、試されている。
僕が兄にとって、利益になるのかどうか。
脅威とならないのかどうか。
殺すのが目的ではない。
兄は言っているのだ、「私の役に立て」と。
だから僕は、それを証明するためにゲームを生き残り、運営人となった。
そして、そこで成世と出会った。
初めて見た彼の目は、復讐に駆られていて、これ以上ないほど暗く歪んでいて。
自分には無い、何かに酷く執着する目で。
その時初めて、欲しい、と思った。
だからかもしれない。
…理性が飛び、何かを渇望してしまった、あの時。
咄嗟に、彼を求めてしまったのは。
最初のコメントを投稿しよう!