寂しい桜

現在2

　今日、健人のアパートで宅飲みをすることになった。

　20歳になって酒の味を覚えてから、ちょくちょく酒とつまみを持ち寄り、互いのアパートを行き来して飲むようになったのだ。
　その健人のアパートに行く途中、つまみを買うためにコンビニに寄ろうと地図で検索する。
　意外といつもの道にはなく、少し遠回りすることになった。
　酒とつまみを入れたマイバックを持って、いつもと違う景色を堪能しながら歩く。
　すると、開けた空き地の前を通りがかった。
　何気なく眺めていると、あるものを発見して凍りつく。

　そこには1本だけ、満開の花を咲かせる桜があった。
　そしてそのすぐ側に、あの頃と変わらない姿の少女が、笑顔でこっちを向いて立っていたのだ。