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時折咳込みながら、煙草を吸う。普段吸わないくせに、12ミリの赤ラークなんて吸うから、余計にむせる。
口の中は苦いし、吸い方が下手なせいか、呼吸が苦しい。
こんなものを吸う連中の気が知れない。
最後のひと吸い、とでも言えばいいだろうか。葉がほとんどなくなって、フィルタースレスレのところ。それを吸うと、唇が熱くなって、余計に辛い。
吸い終わった煙草を、灰皿の底にグリグリグリ。
消えろ、消えろと念じながら。
フィルターが圧縮された空き缶みたいに潰れて、ようやく手を離す。その手を新しい煙草へ。
残り1本しかなくて、眉間にシワを寄せる。あぁ、こんな顔をすると、アイツに怒られたっけ。
ラスト1本。
かさついた唇で咥えて、不器用な手付きでZippoを使う。かれこれ10本くらい吸ってるというのに、最後の最後まで、上手く扱えない。
親指の爪はボロボロだ。
火がつくと、ゆっくり吸って、肺に入れて、むせ返る。
何度も何度も繰り返し、最後のひと吸い。
唇と目頭が熱くなる。
消えろ消えろと念じながら、灰皿の底に押し付けた。
これでおしまい。
アイツの存在が、記憶から消えることはなかったが、これで忘れてやる。
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