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翌朝 何も言わず、足踏みをしながらただ龍二を見上げ続ける。 「うっせぇな! 今急いでんだよ!!」 何も言っていないのに“うっせぇ”と言ってくる兄、龍二がトーストをかじりながら制服を着ていく。 今朝の龍二の寝起きは最悪で、起こしても起こしても”起きたくない“と言って。 ”何で朝になってんだよ“と、朝になったことにブチ切れていて。 ”ノストラダムスの大予言は何だったんだよ“と、ノストラダムスの大予言にも文句を言って。 ”俺だけ今日は休む“と言ってきたので、学校を休むのかと思ったら・・・。 “今日になることを俺だけ休む“と寝惚け過ぎていることを言ってきたので、それには流石に叩き起こした。 食パンをかじりながら制服を着ていくというなんとも効率が悪いことをしているので、それにはもう我慢出来ずに龍二の首元に両手を伸ばした。 「もう・・・!はい!!」 あたしは龍二のワイシャツのボタンを首元から閉めていく。 「あざっす・・・。」 「本当だよ!」 トーストを食べる龍二のネクタイにも手を伸ばすと、自然と笑えてきた。 「お母さんもお父さんのネクタイをこんな風に結んでたなぁ。 お父さんは食パンなんてかじってなかったけど。」 あたしの言葉に龍二は何も言わず、食パンを食べ続けていく。 「うちらは生きるんだから、ちゃんと今日も生きようよ。」 「・・・・・・。」 「あたしって、ほら・・・、龍二とは違うヤバさのある奴じゃん? 駅から離れてるとはいえ未だに高校までの道は覚えられないし、龍二はすぐに手が出るタイプだけど私はすぐに口に出るタイプだし、龍二は無事に反抗期を迎えてるみたいだけど私は未だにお父さんっ子でお兄ちゃんっ子だし。」 ネクタイを結び終わった後、ネクタイを片手でポンポンッとした。 「お兄ちゃんの中には龍二もちゃんと入ってるからね? 龍二は私の双子のお兄ちゃんでしょ? ちゃんと今日も明日も生きててよ。 2人でちゃんと大人になって、何の仕事をするかは分かんないけどちゃんと仕事もして、結婚もして、お互いの子どもを連れてお兄ちゃん家族もお父さんも一緒にみんなでお出掛けとか旅行とか行ってさ。 そんな絶対楽しい未来があるの、あたし凄く楽しみにしてるし。」 「・・・・・・・。」 「それでみんなでずっと、毎年家族写真を撮ろうよ。 大人になってもオジサンとオバサンになっても、お爺さんとお婆さんになっても、家族みんなで仲良くしていようよ。」 食パンを無言で食べ続けていき、食べ終わった龍二が私のことを見下ろして、やけに優しい顔で笑った。 「そうだな。」 昨日のことをよっぽど反省しているのかとも思ったけれど、最近の龍二はいつもよりももっと変で。 それには心配になってくる。 「最近変なもの拾って食べたんじゃない? 昔はよく小学校の校庭になってる夏みかんを勝手に食べて校長に怒られまくってたし。 それでもやめずに、しまいには落ちてるよく分かんない実まで食べてお腹壊して、校長が真っ青になって学校を巻き込んだ騒ぎになったじゃん。」 「今はそんなもん食ってねぇよ!」 龍二のいつものツッコミには安心した。 「おら!早く行くぞ!」 「は!?あたしが手伝ってあげたんだけど!!」 今日も慌ただしく、ちゃんと1日が始まった。
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