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「杏、古典の資料。」 龍二が当然のように右手を出してくるので、それにはイラッとした。 龍二が”谷間さん“と付き合ったことなんかよりもずっとイラッとした。 「知りません。」 「は・・・?いつも貸してくれるだろ!?」 「そんな態度の人に貸したくないから!」 私の言葉に龍二は教室の時計を見て、それから渋々だけど言った。 「杏様、貸してください。」 “久しぶりに勝った〜!” 心の中で喜び、顔は絶対にニヤニヤとしながら龍二に古典の資料を渡した。 「”龍“というより”猿“を兄に持ち、妹の私は大変ですよ!」 私の嫌味と古典の資料をしっかり受け取った龍二。 その龍二の表情と雰囲気を見て・・・ 直感的に、“ヤバイ”と思ったら案の定・・・ 「龍二!!ごめんなさぁぁぁぁい!!」 龍二のスマホを奪おうと、謝りながら教室中を走り回る。 「走るのが遅くなったよな〜!! 昔の方が速かっただろ!!!」 龍二が爆笑しながら教室を走り回る。 「そんなわけないじゃん・・・!!!」 「幼稚園の園長もお前の素早さに追い付いてなかっただろ!!!!」 「園長先生はお爺さんだったでしょ〜・・・!?」 そんな大昔の話を出してきた龍二に懇願する。 「お願い!! 誰にも見せないで・・・・っ!!」 それはマズイ・・・ 非常にマズイ・・・ 「そんな態度の奴の言うことなんて聞かねぇーよ!!」 そう言われてしまって・・・ 「龍二様・・・!!お願いします!!」 龍二がやっっっと止まり、あたしをニヤニヤ見下ろしてきた。 「消去して!!」 「ほらよ!」 龍二が投げるようにスマホを渡してきた。 あたしはそれをキャッチし、急いで龍二のスマホを見て・・・ 開かれているその写真を見て改めて焦る。 だって、そこには・・・ あたしがパーちゃんを抱っこして寝ている最近であろう写真が。 「これいつ撮ったの?」 「さあ?」 ニヤニヤと笑う龍二の顔を見て、こんな時のために撮っていたんだと分かり、“最低な猿!!!!!”と心の中で叫び写真を削除した。
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