1・失意の花

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 春麗は、かつての都だった洛陽(らくよう)で生まれ育った。  父親は学問に通じた人物で、春麗も幼い頃から書物に触れることができた。中には兵法に関するものまであったが、春麗は選り好みすること無く知識を増やしていった。  父親はそんな娘を誇らしく思う一方で、「男に産まれていれば」と思うこともあった。  今や漢室の威光はほとんどなく、不満を募らせた民が暴動を起こすような時代だ。この先、何が起こるか分かったものではない。  男ならば武芸を身に付けさせ、己が身を守ることもできただろう。だが、春麗は女。しかも、母親に似て華奢な体つきだ。鍛えたところでどうなるものでもない。  それでも、知識があればうまく逃げることくらいはできようと、父親は学問や囲碁などを春麗に教えるのだった。
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