1・失意の花

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 そして遂に、時が動いた。  幼い帝を配し、思うがままの専横を強いていた董卓を討つため、各地の諸候が討伐軍を結成したのだ。  盟主に選ばれたのは、名家と名高い袁紹。そして、『江東(こうとう)の虎』の異名を持つ孫堅(そんけん)や、袁紹の同族である袁術も名を連ねているという。  洛陽では、その討伐軍を迎え討つために徴兵が行われることになった。  だが、董卓の暴虐ぶりを許せなかった父親は徴兵に応ずることを良しとせず、家族を連れ郷里である頴川に逃亡することにした。そして、その途中で、黄巾党(こうきんとう)の残兵と思われる賊に襲われて傷を負った。  洛陽に戻ろうにも、すでに戦が始まってしまっていた。仕方なく近くの村で応急処置だけはしたが、傷の治りが思いの外悪く、やがて春麗と妻を残して力尽きた。
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