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父親は死に際に春麗に言って聞かせた。
「春麗。あの者たちを責めてはいけないよ。あの者たちは、元は民。生活の苦しさから反乱を起こした、元は善良な民なんだ」
「でも……」
「悪いのは、この世の中なのだよ。世が乱れているから、人心も乱れる。世が正されれば、人心も正される。なら、どうすればいいか……。お前なら、わかるだろう?」
そう言って、父親は息を引き取った。
その後、洛陽が董卓によって火を放たれ焼失したと知った。
父親と生まれ育った場所を失った春麗は、しばらく動くことも出来なかった。それでも、母親に励まされ頴川の村に辿り着くことができた。
それからの春麗は、書を読むことをやめ武芸にのめり込んでいった。父親に庇われるだけだったあの時、自分の非力さを知った。
『学識だけでは、何も守れない!』
そう考えた春麗は、持ってきた書の中に護身術について書かれた物を見つけ、母親の畑仕事を手伝う傍ら武芸の稽古をするのだった。
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