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それからしばらくして、董卓が討たれたという報せを聞いた。なんでも、義理の息子だった呂布という男に裏切られたらしい。
呂布は驚異的な武を持つ人物で、その強さから『鬼神』と恐れられているという。董卓を討った後はどこかへ逃亡したというが、その影に女の存在があったとも噂されていた。
「なんにしても、これで少しは良くなるかもしれないな」
誰かがそんな事を言った。みんな笑顔で喜んでいるようだ。
「父さま……」
春麗は、父親が死に際に残した言葉を思い返していた。
『世が乱れているから、人心も乱れる。世が正されれば、人心も正される』
「董卓がいなくなって、みんな喜んでる。でも、また董卓みたいな人が悪いことをすれば……」
この笑顔も見られなくなる。そればかりか、あの賊のようになってしまうのだろうか?
董卓が討たれたとはいえ、まだ世が正されたとは言えない。自分がするべき事は何だろうか?
春麗は村人の笑い声を聞きながら、一人思いを巡らせていた。
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