エピローグ

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あっという間に時間が過ぎ、2人が退席したあと、エンディングを締めくくる映像が流れる。 それは2人のヒストリーをなぞるような、昔の写真を交えたものだった。 兄の赤ちゃんの頃の写真から始まり、現在に向けての成長過程が分かる写真が紹介されていく。 そのほとんど、特に幼少期の写真には私がいた。  ……ああ、この写真の頃だなぁ。私が兄への想いをハッキリ自覚したのは。  ……この頃は自分が異常だって苦しんだなぁ。 映し出される写真に、いとも簡単に昔の思い出が蘇る。 兄への想いを拗らせていた記憶も思い出すけど、もうなんとも思わない。 ただ懐かしいなぁ、そんなことあったなぁと、過去の出来事として捉えられている。 兄と自分の昔の写真から、どんどん移り変わって、今度は2人が出会って以降の兄と響子さんのツーショット写真が流れる。 きっと2人にもここに至るまで、ひと山もふた山もあったのだろうと思う。 4年も付き合っていたというから、ケンカだってあったのかもしれない。 2人の築いてきた軌跡を感じて、なんだか胸が熱くなった。  ……お兄ちゃん、素敵な人と出会えて、こうして結ばれて本当に良かったね。おめでとう。 今の私は心の底から兄を祝福できる。 そのことが自分でもすごく嬉しかった。 披露宴が終わったあと、式場スタッフの人から新郎新婦さんが呼んでますと声をかけられて私は2人のもとへ向かう。 このあと2人は友人を中心とした二次会の予定で、私は不参加だ。 なぜ呼ばれたのかは分からないけど、最後にお祝いをもう一度伝えてから帰ろうと、控え室に急いだ。 「あ、来た来た。詩織、わざわざ来てもらってごめんね」 「詩織さん、今日は出席ありがとう〜!」 新郎新婦の控室で椅子に座って休憩をしている2人に笑顔で迎えられる。 式に披露宴にと長丁場で少し疲れているようだけど、その顔には輝くばかりの幸せが滲んでいた。
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