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「はは、ごめん、ごめん。分かってるよ、詩織ちゃんにそんな意図はないって。……まぁ、そのうちね?」
「そのうち?」
「うん、そのうちちゃんとプロポーズするから楽しみにしてて」
「えっ?」
「ゲームの発売予告ならぬ、プロポーズ予告」
千尋さんはサラリとそんなトンデモ発言をすると、なにもなかったかのように話を変えた。
それ以降その話には全く触れない。
私の驚きだけを取り残し、雑貨屋さんで花瓶を購入して私たちは帰路に着いた。
家に着いたら、「今日の詩織ちゃんはいつも以上にキレイだから我慢できない」と言われ、リビングのソファーで押し倒された。
結婚式のためにせっかく着飾った服やストッキング、下着などが床に散らばり出す。
私は結婚式での幸せな雰囲気の余韻に浸りながら、すぐに甘やかな快楽へと堕ちていった。
そんな幸せな甘く淫らなひとときの後、千尋さんは疲れていたのか服だけ身につけるとそのままソファーで眠ってしまった。
瞼を閉じてスヤスヤと寝息を立てている。
その寝顔を眺めていたら、ああ愛しいなぁという想いが改めて湧き起こってくる。
「好きです」
小さくつぶやき、私はそっと自分から彼の唇に口づけた。
すると、驚いたことに千尋さんの瞼がゆっくり持ち上がり、目覚めた彼と目が合う。
「……モンエクみたいだね」
寝起きの掠れた声で、千尋さんは一言そうつぶやいた。
勇者のキスと愛の言葉でオーロラ姫は目覚め、2人は幸せに暮らすエンディングを迎える、真実の愛をテーマにしたモンエク。
千尋さんはさっきプロポーズを予告してくれていたけど、実際に私と千尋さんがそんなエンディングを迎えられるかはまだ分からない。
それに本当にプロポーズをしてもらって結婚したとしても、それで終わりではない、始まりだ。
ゲームと違って、私たちの生活は続いていく。
でもこの幸せは2人で築いていける、すべては私たち次第だ。
いつまでも千尋さんと幸せに暮らせるように、私はもう同じ過ちは繰り返さない。
これからは、お互いに素直になんでも言い合って千尋さんと2人で関係を作っていきたい。
もう一方通行の恋じゃないのだから。
「俺も好きだよ」
私たちは再びキスを交わす。
まるで愛を誓い合うように。
〜END〜
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