私と彼女の物語

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 手術後はしばらく寝たきりだった。両親が様子を見にきてくれたが、体を動かすとお腹が痛い、話すと痛い、笑っても痛い……何も出来なかった。そのおかげで、藍は自分の小説に対しての想いや考えをまとめることができた。   「手術終わって良かったよー。体動かすとお腹痛いって藍のお母さん言ってたけど大丈夫?」  何日か経って曽良がお見舞いにきてくれた。会いにきてくれるのは嬉しい反面、彼女も忙しいだろうに、申し訳ない気持ちもあった。 「話しても笑っても痛いなんて聞いてないよハハハ……でも動かないと血が固まっちゃって再手術になるんだって、やだなぁ……」 「じゃあ適度に動かないとね〜」 「うん、でもレポートが……」  レポートは終わっている。小説の続きのことだ。 「まだ終わってなかったの?でもまぁ今は自分の体を1番にしないと。藍っていっつも遠慮してるところあるよね」 「そうかな?」 「今も私が会いにくるの申し訳ないなって思ってるでしょ」 「う、図星……」 「やっぱりね。もっと自分のことを大切にしてよね。嬉しいと思ったら申し訳なく思わなくていいの」  確かに藍は自分に自信がなく、他人を優先してしまうところがある。もっと自分の気持ちを出さないとなぁ……小説も自分のことばで書かなきゃ。  曽良が帰った後、藍はパソコンに小説の続きを打ち込んだ。書いていた結末を書きかえていく。    出来上がって何度も何度も読み直し、修正した。そしてこれが良いと思ったものができた頃には外は真っ暗だった。  藍は紅葉に連絡をとった。小説をチェックしてほしいと。  数日後の昼、紅葉はやってきた。藍の病室で小説をみてもらう。 「……これでいいのかしら?」  紅葉は最終章を読んで藍に目をむける。 「はい、お願いします」  藍は頭を下げた。 「先生も喜ぶわ。じゃあ会社にこのUSB持ち帰って検討するわね。本当にありがとう、また連絡します。お大事にね」  その後、藍の執筆した最終章はほとんど修正なしで下巻に追加されることになった。発売は5月頃になると紅葉から連絡があり、藍はちょっと緊張した。人の小説とはいえ、自分の文章が世間にでていくのだ。これが藍の小説家としての始まりとなるのだった。
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