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その日世界は形を変えた。地は飢え、植物は枯れ果て、人々は道路に横たえている。そもそもそこが本当に道路だったのか今となっては確認のしようがない。死んでいるのか生きているのか。そんなことは誰も気にもとめない。自分のことで精一杯だからだ。あとどれくらいで死ぬのか。皆必死に呼吸を続けながら自分が死ぬその瞬間を待つだけだった。
それは10分前に起きた。
一瞬の出来事だった。
死んでいった多くの人が何が起きたのか理解できないまま死んだ。
突如として空に現れた塊は地球に向かって落ちてきた。
一直線に、迷いなく。
人々に何の抵抗をさせる猶予すら与えず、夜空を白く輝かせ、美しく散った。秒速10kmの速さで周囲に巨大な衝撃波をもたらしながら地球に直撃したのだった。
その結果地球は5分の1程の大きさになり、隕石が衝突した反対側の国に住む人々にも甚大な被害を与え、今現在生きているものは世界中を探し回ったとしても数百人しか居ないだろう。
そんな中、日本で僅かにいる生存者のうちの1人であるタカトは下半身を瓦礫で潰され、足の感覚はもう無くなっていた。意識が朦朧とする中、今日の学校での出来事を思い出していた。
「───もし明日この世界が終わるなら、タカトは誰と一緒に最期を迎えたい?」
学校の屋上で雲ひとつ無い空を見上げながら幼馴染のナツキが言った。
「世界が終わるとか、漫画じゃないんだからそんなことあるわけないだろ。」
タカトは鼻で笑って答えた。
「もしもの話だよ。私の質問に答えて。」
ナツキは微笑んだが、その目は真剣そのものだった。タカトは上を向いて言った。
「まあ、本当にそんなことがあるなら、俺はお前と一緒にいてやるよ。」
付け加えて言った。
「お前は友達居ないからな。俺が一緒にいてやる。」
ナツキは驚いた顔をした後、幸せそうに笑った。
「じゃあ、その時になったら私を迎えに来てね。」
まさか本当に世界が終わるとは思わなかった。タカトは空一面に星が見える美しい空を見つめながら後悔した。ナツキを迎えに行けなかったこと、ナツキの話を真剣に聞かなかったこと。
「約束、したのになぁ」
今、こうしている間にも次々と絶え間なく人が死んでいく世界でナツキは今、何をしているだろうか。何処かで生きているだろうか。それとももう、この世界には居ないのだろうか。いつまで経っても知ることの出来ない問いを浮かべながらタカトはゆっくりと目を閉じた。
その時最後の命の灯火が尽きた。
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