一匹狼が忠犬になるまで

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一緒に学校へと歩きながら犬童に少し質問してみたところによると、彼は別の高校から転校してきた1年生らしい。この体格で1年とは驚きだ。 違う学年とはいえ銀髪のデカい男なんて嫌でもその存在が目に入るか、噂を聞くはずだと思っていたが、転校してきたばかりなら知らないのも納得だ。 目立つ髪色のせいか喧嘩を売られるのは前の学校にいた時から日常茶飯事らしい。黒に染めればいいのではと思ってしまうが、きっとそう簡単な話でもないのだろう。 「じゃあ、俺はこっちだから」 学校に着き校舎に入った俺は、階段の前で犬童にそう言った。 1年は1階だが3年は3階だからここで別れなければならない。 しかし、犬童は何やら怪訝な顔で俺を見返してきた。 「…あんた…先輩だったのか…?」 「ああ、言ってなかったか。3年だ」 「3年…」 なんかショック受けたような顔してないか? 「どうした?」 「…俺…同学年かと思ってて…普通に、タメ口で…」 「…フッ」 「!?、何笑ってんだ!」 「いや、悪い悪い…」 この風貌で言葉遣いを気にするなんて、正直言って似合わないからつい笑ってしまった。 何か、あれだな。そんなに悪い子ではないのかもしれない。 見た目いかついし喧嘩してたし舌打ちしまくられたけど。 「別に気にしなくていい」 「…でも…」 「お前が気にするっていうならこうしよう。俺のお願いを一つ聞いてくれ」 「…?」 「もう喧嘩はするな」 「………」 俺の言葉に犬童は眉間にもの凄い皺を寄せて黙り込んだ。 あまりの凶悪な顔面に周りの奴らがギョッとした顔をしながら側を通り過ぎていく。 「じゃあ、もう時間だから俺は行くな」 「!、あ、おい…」 これ以上は遅刻してしまうので、返答は待たずに犬童に背を向け、階段を駆け上がった。
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