一匹狼が忠犬になるまで

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「ふぅ…」 運んで来た男達を空き地の地面に積み上げて息を吐く。 一応柔道やってたから人を持ち上げるのは得意なほうだけど、さすがに3人いっぺんは大変だったな。 「次からは喧嘩は買わないか、こういう迷惑にならなそうなところに誘い込むかしたほうがいいぞ」 男にそう声をかけると、鬱陶しそうに顔を逸らされた。 「…さて、じゃあ一緒に学校行くか」 「は?」 同じ学校なのだから折角だし、と思って提案すると、心底意味不明だというような声が飛んで来た。 「その制服、禄央館だろ?俺も同じなんだ」 「げ…」 どうやら俺が同じ制服を着ていることに今気付いたらしい。 しかし「げ…」は失礼だな。 「お前不良みたいだけど、制服着てるってことは学校行くつもりだったんだろ?さぁ行こう」 「ちょっ、触んなよ…!」 背中に手をやると、ギョッとしながら振り払われてしまった。 「そういえば名前聞いてなかったな。俺は猫矢貴虎。お前は?」 「……あんた…何なんだよ…」 「ん?今名乗っただろ」 「そうじゃねぇ!…チッ…犬童だ」 「剣道?」 「おい違う字浮かべてんだろ。犬に童話の童で犬童だ」 「ぁあ、そういうことか。で、下の名前は?」 「は?……チッ…志狼だ」 「そっちはどういう漢字なんだ?」 「…志(こころざし)に、狼…」 狼か…確かに、銀髪だし鋭い目つきとかなんか狼っぽいかもしれない。 「犬童志狼な。かっこいい名前じゃないか」 「……」 「俺は貴族の貴に虎で貴虎って書くんだ。あ、苗字は猫に弓矢の矢な」 「チッ…別に聞いてねぇよ…」 「あと舌打ちするのやめてくれないか。 この短時間で6回もやられてるんだが」 「…チッ」 「あ、こら、7回目」 「チッ」 「お前わざとやってるな?」
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