一匹狼が忠犬になるまで

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2人しばらく無言で歩き、俺の家が近くなってきてから、気になっていたことを質問した。 「犬童…どうしてあそこが分かったんだ?」 「……あいつらの仲間が、俺のところに来たんだ」 「!」 「「お友達をボコられたくなけりゃついて来い」って言われて…すぐにあんたが狙われたんだって気付いた」 「…それで、そいつらは?」 「ボコッてあんたの居場所聞き出した」 その言葉に、俺は思わず立ち止まってしまった。 「!、喧嘩、したのか…」 「…ぁあ。悪い、俺…約束守れなかった…」 そう言った犬童の横顔は、何だかとても寂しそうだった。 「…犬童…いいんだ。俺を助けるためにやってくれたんだろ? まさかそんなすぐにお前のほうにもあいつらの仲間が行ってると思わなくて、俺が大人しく連れて行かれたのがダメだったんだ。だから…」 「なぁ」 「…犬童?」 「もう一緒にいるの、やめよう」 「…は?」 「もう俺に関わらないでくれ。 でないとまた…同じことが起きるかもしれねぇ」 「…犬童、俺なら大丈夫だ。絡まれたって別に自分で何とかできるし…」 「そういう問題じゃねぇだろ。 あんたに迷惑かけたくない。だからもう…関わんな」 俺の目も見ずにそう言い放った犬童は、1人で足早に歩き出した。 「っ、犬童!」 呼びかけても応えず、こっちを見ようともしない犬童の背中に強い拒絶の空気を感じて、俺は駆け寄ることもできず立ち尽くしてしまうだけだった。 翌朝、俺は無意識に2人分の弁当を作ってしまった。 学校の中なら一緒にいても問題ないんじゃないかと思ったが、その日の昼休みに屋上に行っても、大体俺より先に来ていた犬童の姿はなかった。 2つの弁当箱を取り出して床に置いたものの、何だか食べる気が起きずにボーッとそれを眺めてしまう。 待っていれば来るんじゃないかとも思ったが、結局30分経っても犬童は屋上に来なかった。 やっぱりあいつは、もう完全に俺との関わりを絶つ気らしい。 もしかしたらまた、喧嘩してしまうようになるのか。そして果てにはまた、転校するハメになってしまうかもしれない。 もう一度犬童と話をしないと。 そう思っても俺は犬童の連絡先を知らない。クラスも知らない。 何より…昨日のあの背中を思い出すと、会うのが怖いと思ってしまう。 どうやら拒絶されるのが怖いと思ってしまうほど、俺は犬童のことを好きになってしまっていたらしい。 次の日も、その次の日も俺は屋上へ行ったが、犬童が来ることはなかった。
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