夢の中に咲く桜

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 私には大好きなものがある。   夢の中で見る桜だ。  物心ついた時にはその夢を見ていて、夢を見るのは決まって桜が咲く季節。  気が付くと、私は二階の寝室の窓の前に立っていて、庭には見たことのない桜の木が生えている。  窓から見えるその桜は花びらがキラキラと光輝いている様でとても綺麗だった。   私は毎年、桜の季節が待ち遠しかった。  高校生になった頃、いつも通り夢の中で桜を眺めていると、ある違和感を感じた。  風で桜の花のが揺れるたび、花や枝の隙間に一瞬だけ何かが見えるのだ。  あれは何だろうと目をこらしても、その部分だけが薄くモザイクがかかっている様に見え、結局それの正体は分からなかった。  翌日、翌々日も夢を見た。  いつもと変わらない美しい桜、その花や枝の間に見える何か。  一度気になってしまってはゆっくり桜を眺めるどころではない。今日こそはその正体を見極めてやるぞとムキになり、夢を見ている間中、その一点だけを注視し続けた。  結局、正体は分からないままだった。 だが、一つ気付いた事もあった。  それは、日に日に大きさを増しているように見えたのだ。
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