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翌年も夢を見た。
夢を見るたび、女の腕も伸びていった。そう表現するしかなかった。
前腕が異様に長い腕がぶらぶらと揺れている。
恐ろしかった。心の底から恐ろしいと思っているのに、その光景から目が離せなかった。
女の手首が桜の幹の半分ほどに差し掛かった時だ。
肘が見えるようになった。
それと同時に、二つのつま先が見えた。
翌年、翌々年も夢を見続けた。
胸元まで見えるようになったそれは真っ黒な着物を着ていた。
左右にゆっくりと揺れる姿は、まるで首吊り死体の様だった。
桜の咲く季節、眠るのがたまらなく怖くなった。
なんとか寝ないように努力しても、気付けばあの夢の中に居た。
首が見えた。
もし、顔を見てしまったらどうなってしまうんだろう。考えただけで頭がおかしくなりそうだ。
またあの夢を見た。首が伸びている。
またあの夢を見た。首が伸びている。
またあの夢を見た。首が伸びている。
またあの夢を見た。首が伸びている。
またあの夢を見た。女の口元が見えた。
黄ばんだ歯を剝き出しにして、ニタニタと笑みを浮かべる女の口元が見えた。
「どうなっちゃうんだろうねぇ・・・どうなっちゃうんだろうねぇ・・・」
必死に笑いをこらえている様な喋り方だった。
「顔を見ちゃったらぁ・・・どうなっちゃうんだろうねぇ・・・」
また、桜の季節がやってくる。
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