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「お、学!もう来てたのか!」
元気にそう言いながらやって来たのは僕の唯一の友人、早田だ。
大きな声とは裏腹に身長は160cmしかない僕よりも小さく、体や手足も少し心配に思えるほどに細い。顔も声も中性的で、髪をセットしてメイクなんかすれば女子にしか見えないんじゃなかろうか。
早田は僕の隣に腰掛け、僕と同じように靴と靴下を脱いでズボンを捲り、池に足を入れた。
「・・・今日はちょっと遅かったみたいだけど、大丈夫だった?」
「いやそれがさぁ、さっき道歩いてたらいきなり野良犬に追い掛け回されて、もう大変だったんだよなぁ」
「ははっ、なんだよそれ」
「いやいや!笑い事じゃねぇって!」
僕は早田の話が嘘だと分かった。でも、わざわざ嘘だと指摘するような事はしない。いや、できないと言った方が正しいか。
早田はいつも長袖のスウェットを着ている。理由は聞けないけど、何となく察しは付いた。
ズボンを捲った早田の足には、昨日には無かった青あざがあった。
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