最初で最後の

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 いつも通り他愛ない会話を続けていると、早田は急に俯いて黙ってしまった。  どうかしたのかと聞いても何も答えてくれない。  何か気に障る事でも言ってしまったのかと焦る僕に、早田は呟いた。 「なぁ、このまま二人でどこか遠いところに逃げちまおうか」  その声が、今にも泣き出してしまいそうな子供の声のように聞こえて胸が締め付けられるようだった。  突然の事に何と答えれば良いのか分からず、僕はただ黙って早田を見つめていると、早田は、はっとしたように池の水でバシャバシャと顔を洗い、急いで靴下と靴を履き始めた。 「ごめんごめん!なんか変なこと言っちゃった!忘れてくれ!」  そう言いながら早田は立ち上がり、僕に背を向けて歩き出した。しかし、すぐに立ち止まってくるりとこちらに向き直る。 「じゃあ、また明日な!」  結局、僕は何も言えないまま、帰っていく早田の背中を見送った。  翌日から、早田は一度も池には来なかった。
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