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学校から帰ると、妹が床に寝転がって手足をばたつかせながら泣いている。その泣き声が頭に響いて、いつもイラつく。
「お母さん、雫が泣いてる」
雫が「しずく」垂らしてる、とか、どうでもいいことを考えながらお母さんを呼んだ。
「食べてたおやつ床にばら撒いて、私が怒ったからやけを起こしてるのよ」
キッチンの奥で水の音がする。手を洗っているのか。
あぁ……。潰れているたまごボーロの残骸があるのはそういうことか、と納得した。
「雫、それはお母さんに怒られちゃうね。手、キレイキレイしようか」
横たわるだだっ子を抱き上げた私の手は、全力のエビ反りで嫌がられた。
「出た! 華麗なるエビ反り!」
重いからエビ反りやめてよ。私だって好きで雫を抱っこしてるわけじゃないのに。
「由衣ありがとう、代わるよ」
お母さんが手を差し出すと、待ってましたと言わんがばかりに、エビが甘え上手な子供になる。短い腕を懸命にお母さんへと伸ばし、抱くのは姉ではないと訴える。
「お菓子で遊びたかったんだよねぇ」
ヨシヨシ、とあやすお母さん。私では役に立たないことを痛感する。ぐずっていたのが嘘みたいに泣き止んで、鼻水だけがまだ垂れている。
「雫、鼻きれいにしようか」
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