私はお姉ちゃん

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 意気揚々とまた滑り台に上がる小さな女の子。滑って降りてはまた「もう一回!」と階段へ向かう。その子のお母さんらしき人が「もう一回が何回あるのよ!」とぼやいていて、雫と一緒だと思うと吹き出してしまった。 「ゆい!」  私のことかと思ってびっくりした。でも、当然だけど私じゃなくて、「もう一回!」の女の子のようだった。お母さんはしゃがんで「ゆい」ちゃんの手を取って話しかけた。 「このままじゃおうちに帰れないから、次で本当に『最後の一回』だよ。分かった?」 「うん」  「ゆい」ちゃんは最後の一回を滑り終えると、満足してお母さんと手をつないで公園を後にした。  私は昔の記憶がリフレインしている。あの言葉、私もお母さんによく言われていた。まだ公園で遊ぶと言った私に、お母さんは「次が最後の一回だよ」と言ってくれた。最後の一回を堪能した私は、あの親子のように手をつないで一緒に帰った。そして今では、お母さんは雫に「最後の一回」を言っている。ある意味、魔法の言葉だ。  ノスタルジーを胸に感じながら、コンビニへと向かった。炭酸飲料の喉ごしの爽快感は、私の気分までも清々しくさせた。
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