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そして夕方には相変わらず騒がしい日常が待っている。
「ただいま〜」
「ただまぁ〜」
「おかえり」
部屋から顔を出した私に、雫は「ねえね」と言って足に抱きつく。
「うわ、動けない」
引きずるようにリビングまで歩く。キャッキャと相変わらずご機嫌な我が妹よ。
昨日のこと、謝りたい……。でもなんか素直に言えない自分がいる。私の視線の先が落ち着かない。買ってきたものを手早く冷蔵庫やパントリーに収めていく、いつもどおりのお母さん。
うぅ、タイミングが……分からない。
どうしよう、でも、言うのもはばかられる。時間をもてあそぶかのように、雫をかまっていた。
「あ、由衣。璃子ちゃんのお母さんとLINEで言ってたんだけどね」
「うん」
急に璃子ちゃんのお母さんがなんだろう。
「由衣がもし塾行きたいんだったら、璃子ちゃんのお母さんが『通り道だし、一緒に車で送り迎えしてあげるよ』って言ってくれてるんだけど、どうする?」
「え!」
私は心が跳ねた。足にしがみつかれている雫のことを忘れてしまうくらいに驚いた。
「家じゃ勉強に集中できないだろうし、来年は受験生だから、そろそろ塾行ってもいいんじゃないかなって、お母さんは思ってるんだけど……」
「え、行く! 行きたい!」
ガッツポーズが震えている。喜びの感情が溢れすぎて、声まで震える。
やった、やった! 本当にいいの? 私、塾行ってもいいの?
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