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拭いてあげようとティッシュを鼻へとやるけど、魔の二歳児は嫌がって顔を振る。
ハイハイ。どうせ私が拭いてあげること自体、気に入らないんでしょ。深いため息をついた。
「由衣、魔法の言葉があるのよ。『かわいくしようね』って言ってみて」
思い出したかのように「ふふふ」とお母さんは笑った。
「え〜、何それ」
何が「魔法の言葉」だよ。結局、お母さんと私で態度が違うんだよ。
「雫〜、かわいくしようね〜」
さっきと同じように鼻を拭こうとした。今までイヤイヤと首振り人形と化してた妹が、魔法の言葉を聞いた途端にお利口さんの顔になった。え? マジか。
驚きながらも雫の鼻水を拭いた。最後までずっとじっとしていて、本当に魔法にかかったのかと思うほどだった。
「ほら! 雫かわいくなったね〜」
お母さんの言葉に雫も満足げだ。
「保育所の先生がね、『かわいくしようね』って言ったら拭かせてくれますよって教えてくれたのよ。二歳でもしっかり女の子よね。きれいよりもかわいい方がいいんだろうね」
笑う母につられて笑った。
「そっか〜。雫かわいくなった!」
気持ちもないのに話を合わせる。「ねえね」とたどたどしく話し、小さな手を伸ばしてきた。
「うわ、汚い」
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