私はお姉ちゃん

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 思わず避けた。溶けたボーロが、雫の指先に残っている。 「お母さん、雫の手汚い〜」    そのまま部屋へ行こうとしたら、「由衣。ボーロ、掃除機かけてくれる?」と止められた。 「え〜」  めんどくさ。掃除機を持ってきて、黙ってきれいにした。粉々のボーロがザラザラと音を立てて吸い込まれていく。お母さんはさっき濡らしたハンドタオルで、雫の手と顔を拭いている。  私は掃除機を片付けると黙って部屋に向かった。  小さい子ってほんと手がかかる。自分のことばかりで、何かあればすぐ泣いて、お母さんになんとかしてもらおうとする。お母さんはいつも雫につきっきりでお世話。私のことなんて二の次だ。  十二も歳が離れているから、友達は雫を見るとすぐに「かわいい!」と寄ってきてチヤホヤする。何も知らないくせに。わがままで自分勝手で、自分一人じゃ何もできない。どこがかわいいのよ。他人事だから無責任にそうやって言えるのよ。  私が「いいお姉ちゃん」をしているのは、お母さんを悲しませたくないから。別に雫がかわいいからじゃないのよ。
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