私はお姉ちゃん

4/15
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 前に、お母さんと私と雫でスーパーに買い物へ行った時もそうだ。カートに乗りたくないってわがまま言うから、仕方なく私は雫の手を繋いであげてるだけ。  近所の渡辺さんが「あら、由衣ちゃん、しーちゃんの面倒見てえらいね」なんて話しかけてきて。 「由衣が面倒見てくれるので、いつも助かるんですよ」 「まぁ、うらやましい。うちの子なんて、歳が近いから喧嘩ばかりよ」  嬉しそうに笑うお母さんを見て、私は愛想笑いでその場を凌ぐ。別に面倒見たくて見てるわけじゃない。そんなの、仕方ないからに決まってるじゃない。誰が好き好んでわがまま娘のお世話をしたいと思うわけ?  姉妹(きょうだい)喧嘩できるってうらやましい。それって、どっちも対等に言い合えるってことだよね。十二も下の子に、喧嘩なんかできない。不満をぶつけても意味さえ分かってもらえない。ただ私が怖くて泣いて終わり。そしてお姉ちゃんでしょって怒られるのは私。  雫のけたたましい奇声とドアを叩く音に、びっくりして心臓が止まるかと思った。ドアの向こうで「ねえね、ねえね」と笑いながら私を呼ぶ。  試験週間だから勉強しようと思ってるのに。胸の奥で渦巻く何かに気付かないフリをして溜め息をついた。 「雫、うるさいよ、何?」 「ねえね、あそぼ〜」  無邪気なその笑顔にいらだちすら覚える。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!