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前に、お母さんと私と雫でスーパーに買い物へ行った時もそうだ。カートに乗りたくないってわがまま言うから、仕方なく私は雫の手を繋いであげてるだけ。
近所の渡辺さんが「あら、由衣ちゃん、しーちゃんの面倒見てえらいね」なんて話しかけてきて。
「由衣が面倒見てくれるので、いつも助かるんですよ」
「まぁ、うらやましい。うちの子なんて、歳が近いから喧嘩ばかりよ」
嬉しそうに笑うお母さんを見て、私は愛想笑いでその場を凌ぐ。別に面倒見たくて見てるわけじゃない。そんなの、仕方ないからに決まってるじゃない。誰が好き好んでわがまま娘のお世話をしたいと思うわけ?
姉妹喧嘩できるってうらやましい。それって、どっちも対等に言い合えるってことだよね。十二も下の子に、喧嘩なんかできない。不満をぶつけても意味さえ分かってもらえない。ただ私が怖くて泣いて終わり。そしてお姉ちゃんでしょって怒られるのは私。
雫のけたたましい奇声とドアを叩く音に、びっくりして心臓が止まるかと思った。ドアの向こうで「ねえね、ねえね」と笑いながら私を呼ぶ。
試験週間だから勉強しようと思ってるのに。胸の奥で渦巻く何かに気付かないフリをして溜め息をついた。
「雫、うるさいよ、何?」
「ねえね、あそぼ〜」
無邪気なその笑顔にいらだちすら覚える。
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