朝戸風

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朝戸風

「大人の恋は切ない、 だって、はじめから叶わないことのほうが多いから」と彼女が言った。 「俺、もう行かなきゃ」 彼は白いワイシャツを羽織ると手首のボタンを詰める。 シャツの第一ボタンを開けた首元から見える 彼の素肌。 白いワイシャツと黒いズボンの後ろ姿。 世の中が目を覚まし、 動き出すには少しだけ早い頃、 「カチャ」っとドアを開け、部屋を出て行く彼を彼女は無言で見送る。 薄衣姿の彼女はベッドから起き上がると、その姿にストールを巻き付け2階の窓際に立った。 窓を開けると、冷たい早朝の風が頬に当たる。 そして、 今日も一日が動き出す。
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