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楓の思い
卒業式を間近に控えた頃、楓は仁と心春と音楽室に呼び出した。
「楓、どうしたの?」と心春が楓に聞いた。
「心春、お前に話がある」
「何? 結月さんとのこと? 私、聞きたくないな」と結月が教室を出ようとする。仁が結月を追いかけ手を握った。
「心春、逃げないで、ちゃんと聞いてあげて。楓の気持ち」と仁が心春に言った。
「心春、俺ね結月さんのことが好きなんだ」
「知ってるよそんなこと」
「でもね、近いうちにお別れするんだ。だから心春にはちゃんと話しておこうと思って」
「なんで? お互いに好きなのになんでお別れする必要があるの?結月さんもひどいよ。昔の恋人の城崎さんが現れたから、そっちに行くなんて楓が可哀そうだよ。これじゃまるでピエロじゃん」と語気を荒げる心春。
「心春、ちがうんだ。ちがうんだよ心春」
「何がちがうの?」
「俺が、俺が選んだんだよ。この恋を、苦しい恋を、辛い恋を。そして、彼女の未来のために決めたんだよ別れを……」
「わかんないよ。恋するって、幸せになる事じゃないの? こんなんじゃ私、楓のこと諦められないよ。私は、楓みたいに大人な考えは出来ないしマジでわかんないよ。お子様の私にはわかんない」と言うと、心春は泣き出した。
「心春、楓が選んだ答えなんだよ。だからさ、わかってあげて」と仁が優しく言った。
「心春、ごめんな。俺、心春が思い描くような恋はできなかった。こんな恋しか選べなかった。泣かないで心春」と言うと楓は心春の頭を優しく撫でた。
楓の言葉を聞いた心春は
「楓は大人なんだね。大人の恋をしちゃったんだね」と言った。
楓は微笑むと「ちがうよ。まだ俺は大人になっちゃいけないらしいんだ……」と心春に言った。
放課後の音楽室。
三人が卒業するまであとわずか……。
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