一章 始動

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(二)  廉崎(れんざき)の頭を悩ませる懸念事項。それは、新しく部下となった男・冴場(さえば)龍二(りゅうじ)のことに他ならない。  何故なら、この男は――警視庁(いち)の問題児だからである。  容姿端麗、頭脳明晰、身体能力抜群――この三拍子は調査書を見た限り、ほぼ間違いなかった。  また、捜査一課時代には持ち前の頭脳を活かした名推理によって、数々の難事件を解決に導いている。  検挙率を見ても、他とはかなり群を抜いていた。  八角(はっかく)の目論見通り、指導係を兼ねて相棒を務めたら、同じく秀でたところの多い廉崎とはかなり相性がいいだろう。――互いに協力さえすれば。  そう。協力――これが問題なのである。  龍二の高い検挙率の裏には、『単独行動』という文字が隠されていた。(すなわ)ち一匹狼。  相棒の相手が同僚だろうが部下だろうが、はたまた上司だろうが、常になりふり構わず好き勝手に行動する。  そして手柄を挙げたら挙げたで、また次なる事件を解決すべく地を駆ける。  性格を四字熟語で表すならば、『猪突猛進(ちょとつもうしん)』や『勇猛果敢(ゆうもうかかん)』が相応しいだろう。
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