ある刑事の決意

2/7
前へ
/170ページ
次へ
「……俺に何か言うことがあるんじゃねえのか」  説明も弁明もないまま、状況だけで全てを理解しろとは、あんまりだ。  淀んだ気持ちのまま、ゆっくりとじゃがいもの片割れに箸を伸ばして口に運び入れる。時折、湯気を漏らしながらなんとか食べ終えたところで、着信音が鳴った。  慌てて懐から携帯電話を取り出し、画面を見る。……やっと来たか。  他に客がいないからか、ここで取っても構わないと佳乃(よしの)は気を利かせてくれたが、俺は外で出ることにした。  冗談ではなく、怒り狂ったら店ごと潰しかねない。  ◇ 「俺だ」 『……レンさん、龍二(りゅうじ)だ』  いつも以上に声を低くして応答すると、同じく硬い声音が返ってきた。 『今どこだ』 「どこでもいいじゃねえかよ、詮索すんな裏切り(モン)が」  まるで何事もなかったかのように淡々と訊かれたので、思わずカッとなって早口で吐き捨てる。  束の間訪れた沈黙を、これほど胸糞(むなくそ)悪く感じたことはない。  ──なんか言えよ。気持ち(わり)いんだよクソが。  まだ出会って間もなかったとき、反発し合っていたあの頃よりも酷い罵詈雑言が、次から次へと溢れ出てきて吐き気を催す。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加