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「……俺に何か言うことがあるんじゃねえのか」
説明も弁明もないまま、状況だけで全てを理解しろとは、あんまりだ。
淀んだ気持ちのまま、ゆっくりとじゃがいもの片割れに箸を伸ばして口に運び入れる。時折、湯気を漏らしながらなんとか食べ終えたところで、着信音が鳴った。
慌てて懐から携帯電話を取り出し、画面を見る。……やっと来たか。
他に客がいないからか、ここで取っても構わないと佳乃は気を利かせてくれたが、俺は外で出ることにした。
冗談ではなく、怒り狂ったら店ごと潰しかねない。
◇
「俺だ」
『……レンさん、龍二だ』
いつも以上に声を低くして応答すると、同じく硬い声音が返ってきた。
『今どこだ』
「どこでもいいじゃねえかよ、詮索すんな裏切り者が」
まるで何事もなかったかのように淡々と訊かれたので、思わずカッとなって早口で吐き捨てる。
束の間訪れた沈黙を、これほど胸糞悪く感じたことはない。
──なんか言えよ。気持ち悪いんだよクソが。
まだ出会って間もなかったとき、反発し合っていたあの頃よりも酷い罵詈雑言が、次から次へと溢れ出てきて吐き気を催す。
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