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『……あんたの言う通り、裏切ったことに変わりはないし、言い訳するつもりもない』
やがて聞こえてきた、互いの間でのみ通じる言葉に拳に固める。
『ただ、悪かったとは思ってない。俺の使命は……あんたを止めることだったから』
「止める? お前が俺を? 何言ってんだ──」
らしくない口調とキャラを使ったせいで、とうとう頭までおかしくなったようだ。ああ、元々おかしかったか。あの異様に高いテンションの裏には、こんな残酷な素顔が潜んでたんだしな。
唇の端から渇いた笑みを漏らした俺に届いたのは、しかし全くもって予想だにしない告白だった。
『捜査一課にいた俺が、なんで畑違いの組対に来たと思う? ──レンさん、あんたの坂江への依存を止めるためだよ』
「……お前、本当にさっきから何言ってんだ」
今、対面していなくて良かった。声だけなら動揺を悟られない自信はあるが、顔を見られたら、きっと言い逃れできないだろう。
龍二の告白はあながち間違いではない。俺にとって坂江は、京悟は、幼い頃に縁を結んだ大切な存在だから。
警察官を志すのなら、特別な感情は捨てなければならない。何度そう思ったかわからない。
だが組対への配属が決まった俺に、彼らの仁義を踏みにじることなんて出来なかった。
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