ある刑事の決意

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 シマを土足で踏みにじったのは向こうであるにも関わらず、何故、全く手出ししていない彼らに向かって『頭を下げろ』と言わなければならないのか。  これまで坂江(さかえ)は、三鷹(みたか)の無礼千万な行いに対して、ずっと目をつぶって耐えてきた。  確かに『やられたらやり返す』の名目の通り、灸を吸えたことは何度もあるが、それはヤクザ組織の掟に従ったのみ。坂江が理由もなく三鷹に手を上げたことなど、少なくとも京悟(きょうご)の代になってからは一度もない。  正義の名の(もと)、全てのヤクザ組織を壊滅することなど不可能だ。  だから俺たち組対は筋の通った賢いヤクザだけを選別し、優遇する。 「何度も口酸っぱく言ってきたんだ、わかってるよな? ヤクザと繋がってるのは俺だけじゃねえ。調べればわんさか出てくる」 『もちろん、あんた以外の情報も調べ済みだ。……猫田(ねこた)さんが、あんなことになってしまったのは、残念だったが』 「はっ……だ?」  ネコちゃん、ネコちゃん、キャンキャン吠え回ってからかってたのは、どこのどいつだ。気色悪い。いや、そんなことより──。 「あれも、てめえが仕組んだことだったのか」
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