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龍二が何故、監察に飼われるようになったのかはわからない。何をもって彼らの信頼を得たのか、俺にはクソほども興味はない──が。
負け犬の遠吠えと馬鹿にされてもいい。最後に、これだけは言わずにはいられなかった。
「……リュウ。俺は絶対にお前を許さねえ。何年先になっても、必ずこの借りは倍にして返してやる。いつでも命捨てれる覚悟しとくんだな」
その後、ヤツが何か言いかける気配がしたが、俺は無言で電話を切った。もうこれ以上は話し合うまでもない。
今日だけはツケ払いで勘弁してくれ、と俺は心の中で佳乃に向かって手を合わせると、懐からセブンスターを取り出して火を付けた。
どこまでも暗く澱んだ冬の寒空に紫煙を吐き出しながら、人気のない路地裏を進む。
大通りに差し掛かる手前に佇んでいる大木をふと見上げると、細い梢の先──固く身を閉ざした桜の蕾が、寒風に震えていた。
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