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 私が全ての真実を知ったのは、銃弾に倒れた彼が復職後、程なくして、あの人が辞職した後だった。  監察が決して無視できない存在であることは、警察官となった今ならわかるつもりだ。けれどあの人の心の傷を思うと、彼を責めずにはいられなかった。  そんな過去の身の上話なんて聞いたことがない、知らなかった──そんなの言い訳にすぎないでしょう、と。  あの人は相棒である貴方を信頼して、全てを委ねていたのに、貴方は一体あの人の何を見ていたの。  嘘に嘘を重ねただけでなく、あの人にとって親も同然だった大切な人を死に追いやり、私の記憶まで操作させて全てをなかったことにした。  彼は『全てをリセットしてもう一度やり直そうと思った』と言ったけれど、それはあまりにも勝手がすぎるだろう。  あの人の壊れた心は──多くのことに傷つき、(いびつ)に曲がった心は、そんな数年足らずで綺麗に修復(リセット)できるものじゃない。  あの人がいなくなって、もう三年目を迎えた春。満開の桜を見上げて、今日も私はあの日のことを思い出す。  私がまだ新米刑事だった頃、慰労会と称して、真っ昼間から桜の木の下、三人で飲み明かしたことを。 『まさみ〜ん。酔っちゃった♡』 『誰が"まさみん"だコラ』  仲良くじゃれ合っていた二人を見て、どうして気づくことができただろうか。  私があの輪に加わった頃にはもう、何もかも壊れた後だったということに──。                  ~完~           短編『泡沫の桜』へ続く。
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