ある刑事の心

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 通話を終えて隣室に戻ると、待ち構えていたらしい女が抱きついてきた。 「何話してたの?」 「ただのだよ」 「……ふうん」  いじけたように唇を尖らせる、綾瀬はるか――いや、永遠に片想いの彼女に似た顔を覗き込む。 「何だよ拗ねてんのか? さっき可愛がってやったばっかだろ」  言いながら、俺のワイシャツ上――ツンと立ち上がった蕾の一つをキュッと摘む。 「あんっ」  それだけで、裾から覗く白い生脚をもどかしげに擦らせる女。  先程までの色事の余韻(よいん)が残っていることは、明らかだった。  ただ最後まではしなかったせいか、欲求不満らしい。女は身体をピタリと寄せると、俺に上目を寄越して強請(ねだ)った。 「ねえ……レンさんが欲しいの。頂戴(ちょうだい)?」  こんな熱っぽさはなかったものの、潤んだ瞳があの日の彼女と重なって見えた。  瞬間、すっかり鎮まったはずの下腹部が痛いほどに(たかぶ)り、舌打ちする。  俺が欲しいのはあんたじゃない。そう言って突き飛ばしたいのを堪え、ただ身体の欲のままに、目の前の女を側のベッドに組み敷いた。 「ちゃんと()いて強請れたらな」  そして、今度こそ、はっきりと不満を顔に出した女の目元を右手で覆い、いの一番に唇を塞いだのだった。 
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