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取調室で被疑者と接する際とは比べものにならない、ほわんとした微笑を浮かべて、「どうだ?」と訊ねる八角。
「俺はお前が適任だと思うんだが」
具体的にどの辺りがそう思うのか、と返しても、この上司は答えてくれないだろう。
ノンキャリア組であるせいか、八角は、論理的な説明や理屈っぽい考え方など、徹底的に頭を働かせることをとにかく嫌う。
廉崎は内心、密かに重いため息をついた。――これは面倒なことに巻き込まれてしまった、と。
しかし警察組織というのは、縦社会そのものだ。
ましてや相手は直属の上司。断れば僻地に飛ばされる――とまでは流石にいかずとも、このように直々に依頼を持ちかけられることは、恐らくもう二度とないだろう。
つまり――今後の出世のことを考えると、断るという選択肢はないに等しかった。
廉崎は、最大の懸念事項に頭痛を覚えつつも、ひとまず八角の提案を承ったのだった。
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