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少し目線を下げた位置で、ホワイトピンクの髪が揺れている。
洗面台の鏡と睨めっこをしていたソイツは、くるりと振り返って笑った。
「このくらいの位置で、どうっすかね」
白く薄い耳朶には、油性ペンで付けられた黒い点がある。
そっと触れれば、擽ったそうに小さく声を漏らした。
「いいんじゃねぇの? あんまり上の方にすると、飾りが下がるタイプのピアスした時、綺麗に揺れないんだってぇ」
何の気もなく発した言葉に、ソイツの表情が見る見る険しくなる。
「アンタ、穴開けてないのに詳しいっすね。ネタ元は、庄田さんか野本さんですか? 女子マネで開けてるっつったら、その二人くらいでしょう。それか……この前、家までレポートの資料を借りに来た、アンタと同じ学部で茶髪の巨乳ですか? 同じバイトしてる丸メガネのロリ女?」
睨み据えてくる眼光は鋭く、不機嫌を隠そうともしない低い声で詰問する。
毛を逆立てて威嚇する猫みたいだな、と微笑ましく思うが、それを口にすれば、さらに面倒なことになるのは分かり切っていた。
「あぁ、そん中で言えば、茶髪の巨乳だわ。つうかオマエ……俺の周りの女まで、良く把握してんねぇ」
隠し切れなかった笑みを、揶揄いや嘲笑と取ったのか──形の良い眉が跳ね上がり、眦が更に吊り上がる。
「オレ! 言いましたよね?! あの茶髪女、ぜってぇアンタに気があるから近付くなって!」
「とはいえアイツ、勉強は真面目だしぃ。代返とかノート借りたりとか、頼りになるってのはあんだよねぇ」
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