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途端、胸倉を掴まれ、怒りに朱を登らせた顔を近付けたコイツが怒鳴る。
「アンタ! 最っ低だな!!」
ギラギラした鋭い眼差しに射抜かれて、高校時代が思い起こされる。あの時と同じように、胸倉を掴み威嚇するように歯を剥いて怒鳴り返す。
「うっせぇ! テメエばっかり好きだと思うな! バァカ!!」
目の前で──眉間の深い縦皺がスルリと消え、目玉が落っこちるんじゃないかと思うほど大きく目が見開かれる。
それを見て、もう一度、舌打ちしてしまう。
「……何で俺が、オマエにピアス開けさせろっつったか、分かるか?」
低く唸るように尋ねるが、答えを求めているわけではない。胸倉を掴んだのとは別の手で、そっと印の付いた耳朶に触れれば──その目元がピクリと痙攣した。
「身につける装飾品なんかは外せるし、バスケにゃ邪魔だ。肌にキスマーク付けたところで、すぐ消える。でも、これなら──残んだろ、一生」
二人だけが、知っていれば良い──そういう印だ。
目の前にある顔は、湯気でも出そうなほどに真っ赤だ。先のように怒りからで無いことは、知れている。
発した言葉の意味を、コイツは正確に受け止めている。
見開かれた目に張る水の膜が厚くなり──表面張力を超える前に、ソイツは両手で顔を覆って屈み込んだ。
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