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その髪色のせいで、入部当初は先輩たちからの当たりも強かった。同類と見做されて見た目の派手な男女に絡まれることも多いし、バイトの選択肢は少ない。
それでもコイツは、これが地毛だとでもいうように、その髪をホワイトピンクに染め続ける。
ことの発端は、本当に些細なものだった。
まだ付き合う前の高校生の頃、レギュラーの一人が部室にグラビア写真集を持ち込んだ。そういう年頃の男が集まれば、よくある話だ。並んだアイドルの中で誰が好みか、どういう子がタイプか。
「おまえは、どの子?」
先輩に訊かれれば、答える以外の選択肢はない。見た目は生意気なコイツも、それをきちんと理解していた。
「あー、右から二番目、ですかねえ」
「クールビューティー系かあ。歴代彼女は可愛い系だったのに、意外ー」
「タイプじゃないから、続かなかったってことかー」
ゲラゲラと笑う先輩たちに、あーもうほっといてくださいよ、と苦笑する。
「ねえ、先輩は、どの子がタイプっすか?」
背を向けて着替えていたところを話の輪に引き摺り込まれ、あぁ? と思わず不機嫌な低声が漏れる。
「巨乳好きの手フェチじゃなかったっけ?」
「そりゃ飯田だろ、コイツは髪フェチだっけ? とりあえず尻派だったろ」
同志よ! と握手に差し伸べられた同輩の手を、るせえ、とはたき落とす。
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