ホワイトピンクの恋人

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 コイツが向けてくる感情は、当初とは随分変わっている。  嫌悪から好意へ──その好意のベクトルが、尊敬から敬愛、思慕や恋情を含むものへと移り変わるのを、ただじっと見つめてきた。  ──今のコイツの髪色は、俺のせいだ。  それだけは自惚れでもなく、はっきりと解っていた。  先日、好みを訊かれて指した、グラビアアイドル──その髪色が、まさに目の前と同じホワイトピンクだった。  その前に同輩が漏らした、髪フェチ尻派を真に受けてのことだろう。  どう思うかなんて、決まっている。  ──馬鹿じゃねえの。  髪色や巨乳に惹かれたから、その名前も覚えていないグラビアアイドルを指した訳ではない。少し吊り目で勝気そうなところが、目の前の生意気な後輩に似ていたからだ。  そもそも好きなパーツで髪と答えたのは、部室でうたた寝していたコイツの頭を撫でた時、そのさらりとした触感が気持ち良かったからに他ならない。  そんなことは全く知らず、コイツは見当違いに行動力を発揮している。  思わず溜息を吐けば、コイツの目元が微かに痙攣した。
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