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「私はアリアを守らなくてはならない」
たった一人の異母妹を救わなくてはならない。
婚約破棄をされたアリアを処刑しようと足搔いているエイダたちの手から守り抜くためには、それなりの犠牲が必要になる。
その犠牲が私だけならば、喜んでこの身を捧げることだろう。
それをアイザックが反対するだろうということは、誰よりも、私が一番知っていることだった。
「アリアと一緒に暮らす為ならば、どんなことでもしようとするだろう」
正気ではないと言われてしまえば、そこまでの話だ。
わかっている。
アリアを失った時の後悔を、二度としたくはないだけなのだ。
「アイザックを優先することはできないよ」
私のしていることは自己満足にすぎない。
「私は、どうしたって、アリアを最優先してしまうだろうから」
アリアが望んでいないかもしれない。
それでも、アリアを救えるのならば、私は手段を選んでいるわけにはいかない。
「……わかってる」
「わかってはいても、納得はしていないだろう?」
「できるわけねえだろ。でも、……俺だって、イザベラが狂っていく姿を知ってるんだよ」
私が狂っていたことがあっただろうか?
――いや。確かに、狂っていたのかもしれない。
アリアを見殺しにしてしまった後、死に場所を求めて生きている姿は正気とはいいがたいものだったことだろう。
「俺はイザベラが好きだ。だから、お前が狂っていくのを見たくない」
アイザックの言葉になにも言えなかった。
淡い初恋は捨てたつもりだった。
どうせ、叶わない思いだと、死に際に吐き捨てた恋だった。
「すぐに返事がほしいわけじゃねえよ」
「なぜ? 返事が欲しくて伝えたのではないのか?」
「いや、俺だって、お前の告白にすぐに答えてやれなかったんだ。俺だけが返事を催促するのはおかしいだろ?」
……そうか。あの時のことを覚えているのか。
想いが叶ったというのに、どうしていいのか、わからない。
アイザックの言葉は嬉しい。
だが、それにどのように答えればいいのか、わからない。
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