ささやかな花見

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来週に終業式を控えている私たちは、 クラスで希望者を募り、花見をする事になった。 場所は当然のように桜がきれいと有名な公園に決まった。 なぜ花見というと桜なのか。 私はこの季節になると毎年疑問に思っていた。 毎年当たり前のように注目されニュースにもなる桜を 私はどうしても好きになれなかった。 花見の参加メンバーに桜というクラスメイトがいる。 桜ちゃんはとてもかわいいと男子からも人気だった。 明るい性格のせいか、女子からも好かれていて、 いつもクラスの中心的な存在だ。 対して私はいつも教室の隅にひっそりといるようなタイプだった。 桜ちゃんが嫌いな訳では決してないが、 どうしても桜ちゃんを見ていると、自分と比べて落ち込んでしまう事があった。 お花見当日、参加者全員で公園へ向かっていた。 私は友達の葵と一緒に列の後ろの方を歩いていた。 少し前には、桜ちゃんを中心に多くのメンバーが集まっているのが見える。 少しして公園に着き、しばらくの間自由行動となった。 葵「あそこの桜もきれいだね。」 葵と公園を散策していると、少し先にある桜を指さしながら 葵が私に声をかけてきた。 私は「そうだね」と空々しい相槌を打った。 その後も葵と「来年も同じクラスだといいね」などと話しながら公園を散策していると、 桜の下にレジャーシートを広げ、ランチをしている子連れのファミリーの横を通りかかった。 子供「ママ、あそこに咲いてる黄色い花はなあに?」 母親「あれは菜の花よ。」 子供「ふうん。菜の花もきれいだね。」 そんなファミリーの会話に何気なく耳を傾けていると、 葵が先ほどと同じように声をかけてきた。 葵「菜野花、見て。あっちにも桜があるよ。きれいだね。」 私も先ほどと同じように「そうだね」と返事をした。 けれど、先ほどとは違って、どこかふっきれたような気持ちで、 「ああ、桜もいいものだな」と心から思った。
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