桜の木の下で

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高校を卒業してから12年が経つ。 今日は20歳の時から10年ぶりの同窓会だ。 そのせいで今日はあの頃のことをこんなにも鮮明に思い出すんだろう。 まぁ今となっては苦い青春の1ページになったけれど。 会場につくと半数以上が集まっているようで懐かしい顔もあれば、誰だか分からない人もいる。 「やっぱり10年も経つと変わるもんだな」 ただどうやら彼女は来ていないようだ。 少し残念だと思いながらも友人たちと思い出話に花を咲かせていた。 会も終盤に差し掛かり歌い出すものもいれば飲み過ぎたのか寝ている奴もいる。 僕は少し疲れてしまって壁に寄りかかって座っていた。 「一人ぼっちで何してるの?」 「あぁ、ちょっと疲れちゃって…あっ!」 声の主を見ると一瞬誰だか分らなかった。 ただ笑顔を見た瞬間分かった、僕がかつて恋心を抱いていた彼女だと。 「久しぶり!」 「…おぉ!久しぶりじゃん」 大人になったと言ってもあの頃の面影は残っていて思わずドキッとしてしまう。 「もうみんな出来上がっちゃてるね、来るの遅かったかな?」 「まぁ、ずっと飲んでたからね。今日は仕事?」 「そうそう、もっと早く来たかったのになかなか帰れなくてさ。ていうか君は寂しく1人で飲んでるのかい?」 「違うって、ただちょっと疲れただけだよ」 「じゃあ私が相手してあげるとしますか」 「そりゃ、どうもありがとう」 「冗談だよ、ただ私が君と飲みたいだけだけ」 昔と変わらない、いたずらっ子みたいに笑う姿を見るとあの時の恋心を思い出して胸がざわつく。 ただ酔っているだけなのか、心まで初心だった高校生の時に戻っているのか肩が触れそうなこの距離にドキドキしている自分が恥ずかしい。 「今だから言えるけど……実は君のこと好きだったんだよ?」 「……えっ、嘘でしょ!?」 「ほんと!君以外の男子とは全然話してなかったし、一応態度にも出してたつもりだったからてっきり気づいてるんだと思ってた」 ここに来てそんな衝撃の事実を聞かされるとは。 そんな素振り見せてたなんて、全く気が付かなかった。 「あれ、でも卒業式の日告白されてOKしてたよね?」 「えっ?告白はされたけど断ったよ?君のことが好きだったんだし」 まさかあれは僕の勘違いだったのか。 そんなことなら一か八か告白すれば良かった。 今更悔やんでも遅いことは分かってるけど戻れるならあの日の僕に言ってやりたい。 「そっか、そうだったんだ。実は、僕もさ…」 「あれ??来てたの!?」 「あー!久しぶり!仕事が片付かなくてさっき来たとこ」 思い切って僕も好きだったと伝えようとした時、彼女の友達たちが気付いたようで楽しそうに彼女と話し始めた。 彼女と友達の邪魔をしないようそっと離れた。 それにしても彼女も僕のことを好きだったなんてな。 あの時、僕が勇気を出して先に告白していればなにか変わってたのかな、なんて。 結局、彼女はお開きになるまで友達たちと仲良く話していた。 あの笑顔を見ると一度砕けたはずの恋心が戻ってきそうになる。 まぁ多分酔ってるからだろう、きっとそうだ。 高校生でもあるまいし、今更彼女とどうこうなりたいなんてことは思わない。 ただもう少しだけ話したかったとは思うけど。 酔い覚ましに駅までは歩いて帰ろう。 夜桜でも見ながら。
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