忘れないで…

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忘れないで…

若君様… お別れでございます… 短い間ではございましたが、 私のような者を 愛しんで下さり ただ、ありがたく… 幸せでございました。 沈んでゆく… どこまでゆくのだろう… 意識が遠のいていく… 若君様のお側に上がってからの日々が 走馬灯のように 思い出された。 お腹に、 若君様の御子を 宿していたかもしれないのに… このような、不忠義な私と一族を、 どうぞ、お許し下さい。 若君様の御子を 生みたかった… でも、若君様のお命を、 お立場をお守りするには、 こうするしかなかったのです。 どうか、お健やかに… 若君様のお幸せだけを 祈っております。 お別れもせず、 去ることをお許し下さい。 愚かな私の事は、 どうぞ、早くお忘れ下さい。 どうか…、 我が父の愚かな企みと 私の浅はかな行いを 若君様も、 どなたも 気付きませぬように… 出来うることならば、 後の世に生まれ変わり 今度こそ、 若君様からいただいた御厚情に、 報いることが出来ますように… それだけが 唯一の望みでございます。 若君様のお側で 過ごさせていただいた 日々を忘れません。 また、お会いしたいと 強く、 強く願えば… いつの日か、 お会いできるでしょうか。 私は、 忘れないで その日を待ち続けます。 若君様は、 どうぞお忘れ下さい。 私のごとき者のために お心を傷めることなど ありませぬように… もう一度 あなたの傍に 参りたい      長い時間を 待つとしても 吾が事を 嘆くことなく 愚かよと     忘れたまえ君 吾は忘れじ 
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