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そこで海輝は首をかしげた。
何時もより客足が多い気がする。たしかに、一月前食堂がリニューアルオープンしたはずだが、それでもここまで客は多くなかった。解放された両開きの扉の前で待ち合わせをしている中年の女性たちは、普段見る事のない明らかに『よそ行き』の格好をした主婦たちだ。そんな彼女たちの横を、夫婦だろう中年の男女が一組扉をくぐる。二人とも明るい色合いのスーツを着ていた。わざわざ一般食堂にそんな服装で来る客は少ないのだが――スーツとまでいかなくとも――何故かかしこまった服装の利用客が多い。
錦を伴い開け放たれた扉に近付くと、普段は置いていないバナースタンドに『3階ホールにて日本画展示会開催中』と書かれていた。なるほど、彼らは芸術の世界で成功した一部の学院卒業生の作品を見に来ているのだ。
一階は売店と美術科の生徒の展示品があるだけで食堂は二階にある。三階は主に休息用のロビーとなっているが、時折展示会などのイベントで使用されているのだ。
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