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「あー……今日からイベントがあるんだ。そらぁ、混むわぁ。仕方がない売店で買い物しよう」
「どこにある?」
「この奥さ」
扉をくぐるが、利用客は二階食堂か三階展示場が目的だろう。
階段へ向かい移動する客の流れに逆らい、時には流されるようにしながらも足を進める。
壁に沿い設置されているガラスケースには美術学部デザイン学科の生徒たちの作品を展示してある。中央に立つ室内柱に置かれた自販機の横には新聞に情報誌、イベントやキャンパス内で発行された冊子やパンフレットが収納されたマガジンラック。その奥に、手洗いとガラス張りの壁で出来た小さな購買部があるはずだ。普段とは違う人の多さに辟易したが他の店へ行くのも時間の無駄だ。階段やエレベータに進んでいく女の集団とすれ違う時、隣にいたはずの錦の姿が遠退いた。
振り向いたとき、海輝と彼の間に甘ったるい整髪料のにおいを纏わせた頭が紛れ込んでいる。
なんて邪魔。
人垣に流されかける彼の手首を掴もうと手を伸ばす。
指先が触れた瞬間、ビクリと震えが伝わり躊躇う程度には驚きが広がる。
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