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「君と一緒に出掛けた家族遠足を思い出す」
彼の通っていた小学校の年間行事の一つだった。
不意に錦が殺気立つのが分かった。
彼にとって海輝から与えられた居場所と優しい記憶の積み重ねは、今は苦痛でしかない。
奪うために、与えたのだ。
奪う程のものを彼が持っていなかったから、奪い取り苦しめる為だけに、彼の欲しがるものを与えた。
「君、本当に可愛かった」
「お前なんか嫌いだ」
「そう」
ペットボトルの茶を差し出すが彼は受け取らない。
白いアスファルトに視線を落としたままだ。
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