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「ウゥウ…ヒック」 「クゥーン」 「茶太郎ぅ…ウゥウウ」 生暖かい舌が涙を拭き取るように頬を舐める 「ありがとう…茶太郎…ぼくの味方は君だけだね」 自分の髪色と同じ色をした毛を撫でながら一回り大きい茶太郎に抱きついた 「ふふっ、僕とおそろいだ」 1番古い記憶…人の顔のような形をしたいつもの天井のシミが見える 「夢…か」 …枕が濡れている 「あぁ…またか…。もう拭き取ってくれるあいつはいないのにな、ははっ…これじゃあわざわざ髪を黒く染めた意味も無いじゃないか」 軽く手ぐしをしながら体を起こして仕事に向かう準備を始める 愛犬が亡くなって早15年 幼い頃に体験したトラウマが刻まれているせいか未だにその傷は癒えないでいる。少しでもその記憶を忘れられるようにと薄い茶色の髪を黒く染めたというのに それにしても運命とは残酷なものだ。幼い俺にとって唯一の家族と言っていいほどの存在が目の前で赤の他人の男の子を助けるためトラックに轢かれたのだから。その男の子の家族は何度も俺に謝罪と御礼を繰り返した。だが幼い俺にはこんないい親が…家族がいるのにどうしてこの人達は… どうして どうして どうして そのような事しか思えなかった。それからだろうか。俺は小さな男の子が苦手になった。姿を見るだけでも眉をひそめて距離をとるほどに。今思えば少し大人気ないことをしていたかもしれない。 助けたのは茶太郎の意思で茶太郎が望んだことなのに あぁそんなことを考えてる暇は無い。今日は大事な会議があるんだった。俺は黙々と食べていたトーストを早々に食べ終えスーツを纏い家の扉に手を掛けた
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